旅行は危険ー


「翔ちゃん、離れたくないよ」


萌花はサソリに抱きついた

「わっ、いきなり何だよっ、ちょっ、目立ってる!皆見てるっ!」

「じゃあ、どこにも行かないで」


萌花はうるうるとした瞳でサソリを上目遣いで見た


「で、でも仕事が…」

「私と仕事、どっちが大事なの?」


出たっ!!お決まりのセリフ!!


「お前に決まってんだろ」

「へ…。」


サソリは即答だった


「お前がそこまで言うなんてよっぽどの理由でもあんだろ。だから今回は諦めて延期にするよ。どうせ、そんなに急ぎでもねぇしな」

「そ、そう」


意外とあっさり従ってくれて逆に拍子抜けする
萌花はサソリから離れる


「じゃ、帰ろうぜ。これから仕事だろ?」

「あっ、そうだった!」

「時間ヤバいだろ、タクシーで行くぞ」


サソリは萌花の手を握り小走りする


「あっ」


翔ちゃんはいつも私の手を握らない
手は私の商売道具だから、大切な大切な傷つけてはいけない物だから


だけど…初めて握ってくれた


「あったかいな」


温もりを感じながらまた苦手なマラソンをするのだった