翌日、萌花さんがマンションまで来た


「いらっしゃい、昨日はどうしたの?」

「うん、サソリとケンカしたんですの」

「え?2人がケンカ?なんか意外だな、まあ、上がってよ」

「いえ、これから仕事ですので。これを渡しに来ましたの」


萌花は珠理奈にチケットを渡した


「ピアノコンサート!?すごいっ!良いの?貰っちゃって?」

「ええ、元々あげるつもりだったんですの。それと、サソリにも渡しといてもらえるかしら。顔合わせづらくって」

「でも萌花さんからもらった方がサソリも嬉しいんじゃ…」

「あの人、好きな人いるんですって。」

「え?」

「ずっと前から好きで、これからも好きな子がいるんですって。」


よく見ると萌花は酷く疲れた顔をしていた


「バカみたいですわね。一途な人を一途に想っても絶対実るはず無いのに…。」

「萌花さん…それ本当に本当の話なの?サソリがそう言ったの?」

「ええ。本当ですわ」


珠理奈はしばし考えた後、ため息を吐いた


「やっぱり萌花さんからチケット渡して」

「でも…」

「萌花さん」

「…はい」

「自分の気持ちぶつけないうちから落ち込んじゃダメだよ。想ってもらいたいなら、想い続けなきゃ。」

「珠理奈ちゃん…。」

「頑張って、萌花さんなら大丈夫だよ」


珠理奈の微笑みを見て萌花は強く頷いた