「好きな奴ならいるよ」


「ずっと昔から。」


萌花の心をすっと風が通った気がした


「そいつだけずっと見てきた、これからもそのつもり」


痛いなぁ…。
自分で聞いたくせに勝手に傷ついてる

苦しいなぁ…。
翔ちゃんにそこまで想ってもらえる彼女はさぞ幸せだろう


なんで私じゃダメなのかな?


パッと翔太の手が離された

「んじゃ、俺帰るわ。タクシーでも拾って帰れよ。」

「うん…。」


生返事のままで、去って行く翔太を引き留めることも出来ずにただ呆然とする萌花


多分空気を読んで、1人で帰ることを選択してくれたのだ


私がワガママだから


「七瀬萌花さんですか」


ふいに声をかけられた


「あなたは…。」