「よう、」


スキンヘッドの奴が話しかけてきた


「これ、お前の親父から預かってきた」


その薄汚い手には小さく白い紙があった


受け取り中身を見る


「えっ?」


『すべて俺が悪かった。許してくれ』


そこにはこう書かれていた

「それと、これ」


男は図体に似合わない黒光りするスーツケースを珠理奈に渡した


「一億入ってる、お前が返した借金だ。」

「どういう…こと?」

「お前に返したいそうだ。お前が返した分は親父の中では借金だったんだろう。企業を立ち上げて真っ当に働いて稼いだ金だ」


「そんなっ、嘘だっ!!あんなくそ親父がっ!!そんなことするはずがないっ!!そんなこと思うはずがないっ!!」


珠理奈は男の胸ぐらをつかんだ


「だったら、何でっ!!もっと早くその方法をとらなかったのっ!?何でお母さんは死ななきゃならなかったのっ!?最初から稼いでくれてたらっ!!こんなことにはならなかった!!私だって……こんなに…苦しまなかったのに…。」


珠理奈の手をやんわり退けて踵を返す男


「それはてめえの親父に聞いてくれ、それと…」


男は立ち止まり振り返った

「『良い友達が出来たみたいだな』とか言ってたぜ」

目を見開く珠理奈


真っ先に思い浮かぶのはあの3人だった


「じゃあな」


スーツケースを引きずってエレベーターに乗る