「神波、座りなさい」

帰ってきての第一声は、父の怒りで満ちた声だった。
父は怒っても怒鳴ったりはしないけれど、その分すごく怖い。

今日はなんだが一段と怒りが増してるように見えて、神波は少し肩を縮こませた。

「お前が稽古をしたくないのは十分わかった。だが、先生だって貴重な時間を割いて教えに来てくださっているんだぞ。
少しは考えなさい。」

「はい…。すみません…。」


先生方からしてみればいい迷惑であろうことは想像がついた。

神波は自分の意見が間違ってるとは思えなかったが、昔から父に歯向かってはいけないような気がして、父には口答えをしたことはなく、今回もまた例外ではなかった。


神波はその後も少し続いた説教の後、胸にちょっとしたもやもやを抱えながら部屋に戻るのだった。