男たちは絡む理由が欲しかっただけなのだろう、相手なんて誰でもよかったのだ。

 運悪く、この青年がひっかかったにすぎない──見ていた青年は、その男の表情を見るまではそう思っていた。

「お前たちに家族はいるか。悲しんでくれる家族が」

「あぁ? なに言ってんだお前」

 男は、あからさまに勝ち気な笑顔を見せた。

「!」

 まさか、わざと絡まれたのか?

 そう直感した刹那──その男は目の前にいた男の首を右手で掴み、ゆっくりと持ち上げた。

「なっ!?」

 他の男たちは、信じられないといった顔で持ち上げられた仲間を凝視した。

 はたから見ている青年も信じられずに息を呑んだ。