顔を見合わせると、フフッと吹き出す。
「ご存知かもしれませんが、僕には怜羅さまと同じ年くらいの娘がいます。
もちろん怜羅さまの方がお美しいのですが…何だか似ているんですよね。うちの娘と。」
「…へぇ?」
「だから、好きな方がいるというのはちょっと複雑ですが……応援しています。今日は、決して意地をはってはダメですよ。」
「分かった。あなたと約束するわ。今日は、素直でいることを。」
私は、一つ約束をかわした。
料理長が包んでくれたお弁当箱は、今日も変わらずキレイで。
大切にカバンにしまった。
「じゃあ、朝食をいただいてから行ってくるわ」
「行ってらっしゃいませ、怜羅さま。」
料理長が私の恋が叶いますようにと、小さく祈ってくれていたことに私は気付かないままだった。