「……ユウ太くん、お父さんのこと、好き?」


ミミ子ちゃんがふいに、小学生相手に喋っているような口調で、俺に尋ねた。


「……えっと」


いきなりそんなことふられても困る。


本人目の前いるし。


お父さんはすごい真剣な目で俺のこと見てる。


ここで嫌い、とか言ったら、お父さんのことだから落胆で地面に沈没する。


何せ俺と母さんのこと溺愛してるから。


「好きだよ。」


俺は好きな子に告白するませた小学生みたいに真っ赤になりながら、好きの言葉を紡いだ。


「そんなの、当たり前、だ」


恥ずかしくて、俺は念を押すように言った。


「良かったね、先生」


ミミ子ちゃんはにこっとすると、


「じゃ、わたしはこれで」


と部屋の出口へと向かった。


「上松っ」


お父さんが慌ててミミ子ちゃんを呼び止める。


そして噛みしめるように言った。


「ありがと、な」


ミミ子ちゃんの顔がふいにゆがむ。


あ、泣くって思った。


ミミ子ちゃんは不敵な笑みを浮かべて


「アホ担任がへたれて行動おこせないんじゃないかって心配してやったんです。ありがと、くらいじゃ…足りないよ。」


と言って俺たちに素早く背を向けた。


「失礼します。」


「ああ、気をつけて帰りなさい。」


お父さんが優しい笑みをミミ子ちゃんに向ける。


「……はい」


ミミ子ちゃんの返事が小さく聞こえた。