ミミ子ちゃんは、今度はがっちり腕を掴んで、俺を女学館の敷地内に引きずりこんだ。


文化祭のときとはうってかわって、静けさをたたえる女学館の相貌に感嘆する俺
を、ミミ子ちゃんはズルズルと引きずっていく。


中庭を超えて、建物の中に入ると、ミミ子ちゃんは『来客者』と書かれたバッジを俺に差し出した。


「行こ。もう手続きはしてあるから。」


「えっ、いや、だから何しにここに来たの……」


俺の問いをきれ~に無視して、ミミ子ちゃんは慣れた足取りで螺旋階段を登りはじめた。


ミミ子ちゃんのペースにいつの間にか巻き込まれてる。


キャラ崩壊してても冷笑してても、何処か控えめな印象のある子なのに、今日は何か吹っ切れたようにサバサバと遠慮がない。


俺は小さな背中を追いかけながら、不安で胸がいっぱいだった。


「ここ、展学室。」


突然、ミミ子ちゃんは立ち止まり、その扉を指差した。


中には誰かいるのだろうか。


防音がしっかりしてるから、何も聞こえないし、何故かこの部屋にだけ窓がないのでわからない。


「開けるね。」


ミミ子ちゃんは俺を見据えて言った。


「あ、うん」


なぜわざわざ俺に確認をとるのかもわからぬまま、俺は曖昧にうなづいた。


「失礼します。」


ミミ子ちゃんは扉をあげ、中に入るとそこにいた人物に話しかけた。


その人は一人小さな丸椅子に座っていて、本を手にあんぐりとこっちを見上げた。


「山田先生、ユウ太くん、連れて来てみた。」


連れて来てみたって……やっぱ、ミミ子ちゃんの独断か。


「な、な、何で、ユウ太……」


お父さんは大きく手をふってわたわたした。


ホント、慌て方が俺そっくりだな。


そんなことを考えれるほど、俺はお父さんとは対照的に、妙に冷静だった。