「ちょっと、あんた達! 何やってんの!?」

 突然、遠くから知らない女の声が聞こえた。

「ヤベッ。香奈、行こう」

「何、言ってんの? まだだよ。まだ終わってない」

 予期せぬゲストの登場に、沙織はこの場を去ろうと焦っているようだが、香奈は全く気にしていない。

「こっちの台詞だ。香奈こそ何を言ってんだよ? 早く行くよ。ほら、仁美も早く!」

「うっ……、うん」

 せわしなく捲し立てる沙織に、仁美は動揺気味に答える。

「お前ら、待て!」

 今度は男の声。

「香奈ッ!」

「分かったよ! 先輩、助かったなんて思わないでよ? 続きはまたのお楽しみだから」

 再度沙織に促された香奈は、乱暴に返事をすると沙織に引きずられながら、捨て台詞を吐いて去って行く。

 声のした方を向くと、二十代前半くらいのカップルが駆け寄って来る所だった。

 私は何とか身体を動かして起き上がる。

「大丈夫?」

 女の人が心配そうに私の顔を覗き込んできた。

「大丈夫です。ありがとうございます」

 こんな姿あんま人に見られたくねえな、と思った私は、お礼を言って立ち上がり、その場を去ろうとした。

 しかし身体が思うように動かずにふらつく。

「全然大丈夫じゃないじゃん」

 そんな私を見て、男は慌てて私を支えようとした。

「あの、本当大丈夫なんで。ありがとうございました」

 本当に情けなくて恥ずかしくなってきた私は、再度お礼を言って軽くお辞儀をすると、急いでその場を去った。