「うん……」

 痩せ型の女が力無く返事をすると、こちらに歩み寄って来る音が聞こえた。

「仁美も、昔みたいに派手にやろうよ。はい、これでやっちゃえ。こんな風にッ!」

 香奈の弾んだ声が聞こえると共に、背中に電気を流したような痛みが走る。多分、ぽちゃ女が持っていた木の枝と同じような物でやってんだろう。

 何度も、何度も、背中を叩きつけられた。

「はい、これ」

 香奈は言いながら私の頭を踏み付ける。

 踏み付けられている頭の痛みに耐えながら、恐らく次に動くであろう仁美の攻撃に身構える私。その攻撃を待つ時間は、とてつもなく長く感じた。


 静寂――。


 風が木の葉を揺らす音まで鮮明に聞こえてくる。

 しかし、なかなか攻撃してくる気配がない。

「仁美。早くやれよ」

 しびれを切らしたのか、ぽちゃ女も仁美を唆す(そそのかす)。

「やんないなら、先に私にやらせてよ。香奈も、ちょい下がって」

「何すんの?」

「それは見てのお楽しみー」

 香奈は「ふーん。まぁ良いや」と、少し不満げに返した。

 香奈に解放された私は、まだ痛む頭を手で押さえて顔を上げ、香奈達の方を見る。一メートルほど離れた所に二人が立っているのが見えた。

「せーのッ!」

 ぽちゃ女の楽しそうな掛け声が聞こえる。

「――ッ!」

 直後、背中に鈍い……、しかし重たい衝撃が走り、一瞬息が止まった。