「今回の獲物は威勢が良いねえ。自分の置かれてる状況、分かってんのかな?」

 今まで黙っていたぽっちゃり型の女が近寄ってくる。そこで香奈は一旦、足を退かした。

 女はそのまま歩み寄ってくると私の背中側に足を入れて蹴り上げる。その勢いで私は仰向けから俯せにされた。

「カハッ……」

 声にならない呻き声が漏れる。

 はあ。大人しくやられんのって結構キツいな。

 でも香奈に手え出す訳にはいかねえし、何とか口で説得するしかねえよな。

 そんな事を考えながら起き上がろうとしたが、再び香奈によって阻止される。

「ゴミはゴミらしく、地面に這いつくばってた方がお似合いなんだよ。アハハハハ」

 香奈は笑いながら私の背中を踏み付けた。

「お前ら……、気に入らない奴が居ると、いつもこうやって……」

「――喋んなよッ!」

 ぽっちゃり型の女の声が頭上から聞こえてきた瞬間、脳天に激しい痛みが走る。

「ってえ……」

 頭を押さえながら顔を向けると、女は近くに落ちていた木の枝で私の頭を殴ったらしい。

「だとしたら何なの?」

 香奈は私の顔の前に来て座り込んだ。

 私は髪をわしづかみにされ、香奈の目線の高さまで頭を持ち上げられる。

「こんな事しても……。何の解決にも……なんねえだろ」

 息が苦しくて上手く喋れない。