この店は十一時からパートのおばちゃんが三、四人混じってランチが始まる。だから私達は心置きなく十二時から休憩が出来る訳だけど。

「まさか飲食店で昼時に休憩が取れる所があるなんて驚いたよ。しかも店長が十一時で上がりとか、マジビビったし」

 休憩室に入るなり、秀人は驚きを隠せないといった様子で話し掛けてきた。

「まぁこの店の売りは夜のバーだかんな。喫茶店も店長の趣味でやってるけど、やっぱ喫茶店と言やモーニングだろ。だから店長的には昼が休み時って考えなんじゃねえか?」

「そうなんだろうけどさ。珍しいなって」

 秀人はハンドソープで丁寧に手を洗いながら答える。

「確かにな」

 私が返事をしたのとほぼ同時に休憩室のドアが開いた。もちろん開けたのは香奈。基本的に香奈も土日だけ入ってて、休憩はいつも一緒。

「お疲れ様」

 私はいつもと同じ調子で香奈に声をかけた。

「……お疲れ様です」

 いつもなら即座に笑顔を返してくるんだけど、何だったんだ、今の間は? いや、それより今、軽く睨んでたように見えたのは気のせいか?

「お疲れ様です」

「お疲れ様です!」

 秀人の挨拶に、香奈はいつもの笑顔で返す。

 なんだ思い過ごしか。と、ソッと胸を撫で下ろし、秀人を喫煙コーナーに誘った。