「わぁ、素敵なお部屋」

 リビングに居る唯が瞳を輝かせて感嘆の声を上げる。

「いやいや、素敵じゃないから。必要最低限のもんしか置いてねぇし、質素な部屋っしょ?」

「ううん。質素だからこそ、この部屋の良さが引き立つんだよ」

 唯はブンブンと首を横に振って答える。

 普通なら“んな訳ねえじゃん”と返したくなる所だが、唯が言うと妙に説得力があった。それは多分、お世辞とかじゃない、素直な気持ちをそのまま口にしているからだろう。

「どうぞ」

 私は麦茶を入れたグラスをテーブルに並べる。

「ありがとう。いただきます」

 唯は一口飲むと目を大きく見開いて私を見た。もしかして、不味かったんかな?

「美味しい!」

 両手を首元辺りで合わせて、大袈裟な程に驚いた。

 唯は一つ一つの事に感動する子なんだな。なんか可愛い。

「ありがと。そこまで喜んでもらえると嬉しいよ。ところで唯は昼メシ食った?」

「あっ、そういえば忘れてた」

 唯は肩を竦めて苦笑い。

 自分が食うの忘れるほど、真剣に私を探してたとは……。そんだけ茜を心配してるって事だよな。