そして一通り消毒を終えた私は、まずは大きな傷口から順にガーゼを当てて包帯を巻いていく。

 数秒の沈黙の後、秀人がいつものからかい口調で重苦しい空気を吹き飛ばした。

「美咲よぉ。俺、今日こんなんなっちまったから、自分で身体洗えねえんだよな。だからお前一緒に風呂入って身体洗ってくれよ。もちろんお互い裸でな」

 その台詞は私の沈んだ心を一瞬にして爆発させるには充分すぎる一言だった。口を開く間もなく大樹が割って入ってくる。

「いや、それはずりいから俺が一緒に入ってやんよ」

 大樹はニヤつきながら私を見てきた。

 私は事の発端である秀人に視線を戻す。

「秀人、どうやら殴られ足りなかったみてえだな。私が続きやってやっから、歯ぁ食いしばんな」

 私がわざとらしくにっこり微笑むと、秀人は慌てて訂正する。

「いや、遠慮しときます。美咲にやられたら命がいくつあっても足んねえ」

 秀人がそう言った直後、大樹が笑い出した。

 つられて私も笑う。秀人も笑い出す。

 ああ。何でこいつらは、こうも簡単に私を地の底から引き上げてくれるんだろう。二人の何気ない気遣いが、ダイレクトに胸の奥を刺激する。

 秀人なんて私のせいでこんな目に合ったのに、こんな時にまで――。優しすぎんよ。

 秀人が愛おしい。

 そんな事を思いながら包帯を巻き終えた私は、仕上げに小さな切り傷に絆創膏を貼っていき、作業を終了した。