秀人は遠目に見ても分かる程、ボロボロにやられている。

「秀人!」

 私は思わず駆け寄って行った。

「秀人、大丈夫?」

 聞かなくても大丈夫じゃない事くらい分かる。想像以上にやられていて、自然に目頭が熱くなり涙が出そうになる。

「たいした事ねえよ」

 そう言って無理に笑う秀人が、逆に痛々しい。若干、話しづらそうなのは口ん中が切れてるからだろう。

「とにかく手当てを……。鍵、開けるから貸して」

 私は早く手当てをしようと焦る気持ちを抑えて手を伸ばす。

 すぐに秀人はポケットから鍵を取り出して手渡してきた。

 私は急いで鍵を開けてドアを開き、秀人たちが入った後に私も入って鍵を閉める。

 秀人は部屋に入ってすぐ、先に顔を洗うと言って洗面所に向かった。軽く口も濯いでいるようだ。

 鼻や口から出血していて、それが乾燥した状態で血が固まってしまっていたから、早く洗い流したかったんだろう。

 私は秀人と入れ替わりで洗面所に入り、一言断ってフェイスタオルを軽く濯いでおく。

 その間に、大樹に秀人を寝室に連れて行ってもらった。リビングにはソファがないから、ベッドに座ってもらう事にしたのだ。

「二人とも、わりぃな」

 寝室に入ると、何故か秀人が謝ってくる。何で秀人が謝んだよ。

「何、言ってんだよ。それより早く手当て……」

 私は濯いでおいたタオルを握り締め、秀人の隣に座った。