「バカ西が勝ち誇ったみてえに電話してきた」

 私はバカ西との電話を思い出して、腸(はらわた)が煮え繰り返りそうになる。

『あのバカ……。とりあえず俺、単車で拾ってそっち連れてくからそこで待ってろ。簡単な傷の手当てが出来るようなもん、あったら用意しといてくれ』

 私が完全に動揺してしまっている中で、大樹は落ち着いて的確に指示してくれた。

「了解。ありがと。気をつけてな」

 私は計り知れない程の感謝の気持ちでいっぱいになる。

『ああ。じゃ、また後でな』

 大樹はそう言って電話を切った。

 なんか……、大樹が居てくれて良かったな。私一人がパニクって家飛び出すより、大樹が迎えに行ってくれた方が安心だ。

 とにかく、煙草でも吸って少し気分を落ち着かせよう。

 そのあと薬局行って傷の手当てするもん買っとかねえとな。確か消毒と絆創膏はあるから、ないのは包帯とガーゼ、後は一応湿布も買っとくか。

 私は煙草に火をつけると、自分の意思とは無関係に逸る鼓動を抑え付けるように深呼吸をする。動揺して真っ白になった頭、痺れる手足。全て自分のものじゃないみたいだった。

 秀人――。