秀人は一体、何を言おうとしたんだろう? そんなの今の私が聞ける筈もなく。

「とにかく一人で抱え込むなよ。今回の事、お前一人が悪い訳じゃねえんだからな。大樹は完全なとばっちりで申し訳ないけどさ。俺も中西の事、殴ってんだから俺にも責任あるし。何かあったら絶対言えよ。間違っても一人で被ろうとか考えんじゃねえぞ」

 秀人は隣に居る私の頭をポフッと叩いた。

 やっぱり秀人は私が悩んでる事なんて全部お見通しか。それにこういう時、私が絶対に口を割らない事も知ってる。

「秀人……」

 私は秀人の優しさ、そして気遣いを感じて胸が熱くなった。でも同時に、明日からの事を考えると胸が苦しくなる。

「まあ良いや。なんかこんな話してっと暗くなるし。悪かったな。とりあえずメシ食うか」

 秀人はにっこり笑ってフォークに麺を絡める。

「ああ」

 私も精一杯の笑顔を返した。

 とにかく今は楽しもう。今だけは秀人の優しさに甘えさせて。そしたら私、明日から頑張るから。

 その後、私たちはいつも通りの楽しい時間を満喫した。バカ言い合って笑って、騒いで小突きあって。本当に楽しかった。時が止まって欲しいと本気で思った。

 けれど時は無情に進んでいく。

 気が付けば、既に零時を回っていた。