何も知らない秀人は「ったく。急ぎすぎだよ」と言いながら追い掛けてきた。

 部屋に入って一服した後は、秀人も手伝ってくれて、新婚気分で二人で楽しく料理を作る。

 いや、新婚気分なのは私だけだが。

 テーブルに料理を運んで、席にスタンバイ。

「いただきまーす」

 二人揃って笑顔で食べ始める。

 テーブルの上に乗っているのは私の好きな冷製トマトスパ。野菜たっぷりのヘルシーな料理だ。

「いやぁ、やっぱ美咲の作ったメシは美味いなぁ」

 秀人はスパゲティーを頬張って幸せそうに笑う。

 この笑顔が見れるだけで私は満足だ。

「いやいや、二人で作ったメシだよ」

 なんだか照れ臭くて、ごまかしてしまう。

「俺は大して何もしてねえよ。つか美咲の料理、毎日食いてえな」

 普段あまり聞く事のない甘えたような声。

 思わず「こんなんで良けりゃ、いつでも作ってやんよ」と言いかけて言葉を飲み込んだ。

 もうそんな機会はないかもしれないから。

「なあ、ちょっと聞きてえ事あんだけど。本当は食い終わってからのつもりだったけど、これ以上、見てらんねえ」

 秀人は突然、真剣な表情になって話してきた。

 私、今何かおかしな事したか?