『お前バカじゃねえの? それで素直に言う事聞く奴が居ると思うか? だいたい俺はお前にだけムカついてる訳じゃねえし』

 やっぱ秀人にもムカついてんのか。だからって、はいそうですかと引き下がる訳にはいかない。

「じゃ、どうしたら言う事聞いてくれんだよ?」

 言葉が見つからず、思わず間抜けな質問をしてしまう。

『何したって聞く訳ねえじゃん。用はそんだけ?』

 マズイ。電話、切ろうとしてるし。

「いや、だから……、とにかく。私の事は殴りたきゃ気が済むまで殴って良いから、頼むからあいつらには手え出さないでくれよ。あいつらにしようと思ってる事も全部、私にやれば良いし」

 私は自分の頭の悪さに嫌気がさしてきた。なんでこう、もっとまともな事が言えないんだろう。

『気に入らねえな。そんなにあいつらが大切?』

 バカ西の声色が明らかにさっきまでより低くなる。

 どうやら逆効果だったようだ。早く良い案を考えねえと。

 返答に悩む間にバカ西が次の言葉を発した。

『気が変わった。お前の事、徹底的に追い込んでやんよ。あいつらと一緒に居られないようにしてやっから。ついでに、笹木とかいう女と茜も。お前の大切なもん、全部奪ってやんよ。あいつらはその後だ』

 バカ西は気味の悪い笑い声を出す。