「おいおい。俺らは善良な一市民だよ。なっ、美咲?」

 秀人はおどけて私に振った。

「ああ。真面目のお手本みたいなもんだからな。大樹とは違うよ」

 私もそれに乗っかる。

「よく言うよ」

 大樹が呆れたように笑ったのを見て、三人で顔を見合わせて笑いあった。

 ふと私はこんな幸せな時間がいつまでも続けば良いな、と思う。しかし幸せな時間は長くは続かないものである。

「そういやお前ら今日バイトなんだろ? 時間良いのか? つか、この際バイトサボって遊びに行くか」

 大樹は不意に真顔になって聞いてくる。

 確かに今からバイト行く気にはなれないけど、まさか二人揃って休む訳にもいかない。

 そう思って返事をしようとした時、秀人が先に口を開いた。

「わり。バイトは休めねえわ。また次の休みにでもどっか行くか。基本的に俺ら休み一緒だから、予定なけりゃ美咲も一緒に」

 秀人の言葉に、私もうんうんと頷いて同意する。

「そっか。ならまた泊めてもらおうかな」

 大樹は地面で煙草の火を消して伸びをした。

 続いて秀人も火を消して「じゃ行くか」と言って制服についた砂埃を払う。

 そして私たちは家路についた。