「大樹、あとツレの二人も。悪かったな。俺ら引き上げっから。大樹、今度飲みに行こうな」

 単車の男の声で私は現実に引き戻される。

「おう。また連絡するな」

 立川の台詞に単車の男は満足そうに頷き、「んじゃ行くぞ」と、他の奴らを引き連れて去って行った。

 嵐が去った後のように、一瞬静まり返る。

「美咲、大丈夫か? どっか怪我してねえ?」

 秀人が心配そうに歩み寄って来た。

「ああ、大丈夫。お前らは?」

 私は安心させる為に笑って答える。むしろ私より二人の方が心配だ。

 秀人と立川はそれぞれ「余裕」「楽勝」などと言いながら悪戯な笑みを浮かべている。

「お前ら本当、化けもんだな」

 私も悪戯に笑って返した。こいつらが強くて本当に良かった。

「それはお前だろ。つか大樹、最後に来た奴、何の知り合い?」

 秀人はポケットから煙草を取り出して火をつける。つられて私と立川も煙草を取り出した。

「ああ。小中と同じ学校のツレっつーか、どっちかってえと悪友かな」

 その返答に、私は思わず突っ込む。

「つか大樹のツレはみんな悪友ばっかだろ?」

 私は無意識に下の名前で呼んでいた。それは自分の中で大樹の存在が近くなっているからかもしれない。

「ハハ。お前らも含めてな」

 大樹は声を上げて笑い出す。