「わりぃな。次は俺が奢るから」

 秀人は申し訳なさそうに肩を竦める(すくめる)。

「いや、これは引っ越し祝いだから奢り返されたら困るよ」

「そうだけど……」

 まだ反論しようとしてる秀人。

「ぐだぐだ言うな」

 私はピザの一枚や二枚、そこまで気にしなくて良いのにな、と思いながらわざと怒気を含んだ声で返した。

「はいっ! んじゃ、ゴチんなります」

 その返答に満足して、私は冷えた麦茶を取りに行く。

「いただきま〜す!」

 私達はピザを食べながら、再びくだらない話で盛り上がった。

 食後の一服は、もちろんベランダで。

 その後も話のネタは尽きる事なく、あっという間に日付が変わる時間になった。

「んじゃ、そろそろ帰るわ。美咲は明日も学校なのに、遅くまで居座ってわりぃな」

 そういや秀人は、学校月曜からって言ってたっけ?

「良いよ。私も、久しぶりに秀人と沢山話せて楽しかったし。そういや秀人は月曜からなんだな」

「そっ。で、明日は一日かけてバイト探し。ある程度は貯めてから来たけどさ。早めに始めねえと」

 秀人は口元を緩ませて柔らかく微笑む。

「親は? 仕送りとかしてくんねえの?」

 聞かない方が良かったか? 一瞬、秀人の表情が暗くなったように見えたけど。

「……その話は、また時間ある時に話すよ。長くなるし」

 そう思ったのも束の間、秀人は一瞬にして笑顔を作り上げて答える。

「そっか。もし話したくない事だったら無理に話さなくて良いよ」