「私は小学五年生ですか。つか、見た目が変わってないって有り得ねえし」

「そういう意味じゃなくてさ。なんか……」

 秀人は一瞬、考え込むような仕草をして煙草を吹かす。

「なんか?」

「表現出来ねえ」

「何だそれ?」

 私はそう返したけど、本当は秀人が言いたい事、何となく分かった。私も秀人は変わってないって思うし。確かに見た目は変わってんだけどさ。雰囲気が全然、変わってねえの。

 何も変わってない秀人と私。私達の時は止まったまま。そう、六年前の二人のまま――。

 本当はそんな事、有り得ねえのにな。過ぎた月日の分だけ、お互いに楽しい事や嬉しい事、辛い事や悲しい事、色んな事を経験してるはずだから。

「うん、よく分かんねえや」

 秀人は考える事を諦めたようで、フッと表情を緩めて柔らかく微笑む。

「秀人も相変わらずだな」

「そうか?」

「ああ。その抜けたとことか、全然変わってねえよ」

 私は悪戯な笑みを浮かべて秀人を見た。

「なっ! 失礼な奴だな。だいたい抜けてんのは美咲の方だろ」

 秀人は口を尖らせて反論する。

「うるせえ!」

 お互い憎まれ口を叩きつつも、こんな調子でその後もバカ話をして盛り上がった。

 考えてみると、こんなに笑ったのは久しぶりだな、とか思いながら。