そしてバイト後。

 私は休憩室で一服しながら秀人に話し掛けた。

「さっきさ、香奈のツレの女が二人、客で来てたんだけど。相談したい事があるっつってるから、ちょっと話してくるわ。もしアレなら先に帰ってて」

 するとすぐに秀人に突っ込まれる。

「おいおい。美咲、今日も新聞配達あんだろ? 別に駄目とは言わねえけど、早く帰って寝た方が良いんじゃね?」

 秀人は心配そうに顔を覗き込んできた。秀人の顔がこんな近くにあるのを実感して、頬の温度が上昇していく。

 私はそれをごまかすように、咄嗟に話を続けた。

「ああ。そんな話し込むつもりはねえよ。あんま長くなりそうなら日を改めてもらうし」

 心配かけないように長話するつもりはない事を伝えると、秀人は安心したように微笑んだ。

「そうか。じゃ、待ってんよ。どこで話してくるんだ?」

 どうやら待っててくれるつもりらしい。なら秀人にはここで待っててもらって、駐車場で話してくるか。

「んじゃ駐車場で話してくんよ。待っててくれんなら、ここで待っててくれ」

 私は灰を落として最後の一口を吸い込む。

「了解。行ってらっしゃ〜い」

「はいよ」

 返事をしながら煙草の火を消して休憩室を後にした。