「俺、地元こっちなんだよ。小五ん時に引っ越してったんだけど、戻ってきたんだ。ケンカ強いのは美咲のおかげかな?」

 秀人は悪戯に微笑んでこっちを見ている。こいつまさか余計な事言うつもりじゃねえよな?

「美咲のおかげ?」

 立川は首を傾げて復唱し、私の方を向いた。

「ああ。ガキの頃って、プロレスごっことかK-1ごっこみてえな事よくやんじゃん? 俺らも五、六人でやってたんだよ。女は美咲だけだったけど。んで、なんか美咲やたら強くてさ。なかなか勝てねえからムキになってよく勝負してたんだよ。そん時に基礎は習得したかな」

 やっぱり。つか、よく考えてみりゃ実際は秀人、絶対本気でやってなかったよな。

「秀人! だから余計な事、言うなっつってんだろ。か弱い少女を捕まえて失礼だぞ」

 私は秀人を睨みつけながら抗議した。

「か弱い? 神谷が?」

「少女? 美咲が?」

 二人して一瞬ポカンとした後、同時に吹き出した。

 マジでこいつら……。

「お前ら、ヤキいれられたい?」

 わざとらしく微笑んで聞くと、二人はブンブンと首を横に振る。

「おい、あんま言ってっと晃みてえにされちまうよな」

「それは恐ろしいな。これ以上言うのはやめとくか」

 今度は二人とも恐がる素振りをしている。

 全く恐がってるようには見えねえけど。調子の良い奴らめ。

「そういや、晃の事で話しときてえ事があんだけど」

 不意に立川が真剣な表情になった。