急いで着替え終えた私は、玄関までダッシュ。

 でも、いざ玄関まで来ると、出るのが億劫になって扉の前で立ち尽くした。

 会いたくない訳じゃない。

 気力が湧いてこないってのも確かにあるけど、やっぱ一番の理由は、今日の一件を秀人に悟られたくないって事。

 いくら只のきっかけっつったって、香奈が秀人に想いを寄せてんのは事実な訳で。

 それが原因で私が何かされたなんて知ったら、きっと秀人は気にするに決まってる。実際、秀人は何も悪くないし、どうしようもない事なのに。

「美咲? そこに居んだよな? 開けてくんね?」

 秀人の声が聞こえる。

 この扉一枚向こうに秀人が居んだよな。なのに――。

「秀人。やっぱ今日は……」

「ゴメンな。無理っつってんのに押しかけてきて。なんかさ、よく分かんねえんだけど、無性に美咲に会いたい」

 へっ? 今、何つった?

「プッ。アハハ。秀人、いきなり何、言い出すんだよ? 笑わせんなよな。ヤベッ息が苦しくなってきた。アハハ」

 予想外の言葉に、私は思わず吹き出してしまう。

 でも、なんか笑ったら気持ちが軽くなった。心ん中のモヤモヤが一気に吹っ飛んだ。

 やっぱ秀人の言葉には魔法がかかってんな。

 この扉を開ければ、そこには秀人が居る。

 私は鍵を開けて、そっと扉を開いた。