「へっ? だから何もねえって。秀人、気にしすぎだよ」

『――美咲。疲れてるトコわりぃけど、今からそっち行くわ。夜メシはカレー持ってくから』

「いや、ちょっ……」

 秀人は私が口を挟む隙を与えてくれず、言うだけ言って電話を切ってしまう。

 耳に当てた携帯からは、無機質な機械音が響くだけだった。

 えっ、マジで? 今からって、今すぐって事だよな? 隣なんだし。

……って、そういう問題じゃなくて。どうすんだよ。部屋に上げんのか?

 何で今回に限ってこんな強引なんだよ。いつもなら“話したくねえなら良いよ”って言うのに。

 傷、バレねえよな?

 うわっ! こんな格好じゃダメじゃん。

 傷を見るために視線を落としたら、バスローブを着てることに気がついた。

 私は何が何だか分からずパニックに陥りながらも、念のため部屋着に着替えようと寝室へ向かう。

 寝室の扉を開けようとした時、インターフォンが鳴り響いた。

 ヤベッ。マジどうしよ。

 どっちにしろ、この格好じゃ玄関から顔も出せないし、とりあえず着替えよう。

「秀人。ちょい待って」

 寝室の前から叫んで、急いで着替える。