発信者は秀人。

 何だろ? つか秀人は怒ってんじゃなかったのか?

 不思議に思いながらも、そのまま通話ボタンを押した。

『おう』

 何度目かのコールで通話中に変わり、電話越しに聞こえる秀人の声に癒される。

 ついさっきまで一緒に居たのに何故かスゲェ懐かしく感じた。

「あっ秀人。さっきはわりぃな。風呂入ってた。電話何だった?」

 平静を装って、まずは秀人の用件を聞く。

『いや、特に用事はなかったんだけどさ。給湯器が動いてたから家に居んのかなと思って。それより今、電話大丈夫なのか?』

「大丈夫だよ。ちょうど私も電話しようと思ってたし」

『何かあったのか?』

 それとなく私も用事がある事を伝えると、秀人の心配そうな声が聞こえてきた。

 いや、ちょっと待て。こういう時は普通、用件を聞くもんだろ。いきなり何かあったかのかを聞いてくるって事は、やっぱ気付いてんのか? だとしたら何ていう勘の鋭さだよ。

「何もねえよ。秀人こそ何かあったんじゃねえの? バイト終わった後、様子おかしかったぞ?」

 慌てているのを悟られないようにしながら自然に話題を切り替える。

 でも質問の答えは返ってこず、代わりに全く関係ない質問が返ってきた。