「大きな音がすれば、侵入者に気づきやすいですから」


ラドリーンは『そう』と答えたものの、こんな海の孤島に来る賊がいるとは思えなかった。

しかし鉄格子に付けられた出入口もまた、通る者を拒むように低く小さかった。

<侍女>が身を屈めて通って行く。

その後から、ラドリーンも身を屈めて通り抜けた。

歩き方がぎこちないのは、足元に隠れてモソモソ歩くリナムのせいだったが、慣れないドレスのせいだと<侍女>が思ってくれるようにとラドリーンは願った。


そこから先は、ラドリーンが足を踏み入れた事のない区域だった――表向きには。

見覚えがあるのは、こっそりと城内を歩き回っている時に来た事があるからだろう。

そうだ。調度品が整えられているのに誰も使っていない感じがしたのを覚えている。

あれは来客のための用意だったのかと、今になってラドリーンは納得した。


「キョロキョロするのはおやめ下さい」

<侍女>が小声でたしなめた。

「この先に護衛の騎士が立っています。背筋を伸ばして前だけをご覧になっていて下さい。礼をされても返してはなりません」

『どうして?』と聞きかけたラドリーンを、<侍女>は目で制した。

答えてくれる気はなさそうだ。


間もなく、扉の前に立つ二人の騎士に行き当たった。