ラドリーンは言われた通り、裾が上がるようにドレスを持ち上げ数歩歩いて<侍女>を見た。

ニコリともしなかったが、頷いたところを見ると合格なのだろう。


<侍女>は、そのままラドリーンを連れて部屋を出た。

開いた扉の隙間から、リナムも抜け出た。


無言で歩く<侍女>の後をついて行くと、天井まである鉄格子の壁に突き当たった。

鉄格子の一部は小さな扉になっている。

<侍女>は腰に下げた鍵束を取り出した。

秘密の通路を使い、城内の殆どの場所を行き来できるラドリーンだったが、やはり鍵付きの鉄格子には気が重くなった。


ガシャンと鍵の開く大きな音がした。


「う……ひゃっ!」

脚に何かが触れて、ラドリーンは小さく悲鳴を上げた。


「どうかなさいましたか?」

<侍女>が怪訝そうに振り返った。


ラドリーンは足元を見た。

ドレスの裾から猫の黒い尻尾の先がはみ出している。


「ああ……いいえ。鍵の音に驚いただけ」

ラドリーンは曖昧な笑みを浮かべてごまかした。

「随分と大きな音が出るものなのね」