「勇者って?」

ラドリーンは小首を傾げた。


――えーとね、剣を持った強い男の人の事だよ。怪物退治とかするの。で、お姫様を貰うの


「ああ……昔話ね」

ずっと前、この城に来る前にはそんな話をしてもらった気がする。

「その"お話"じゃなくて、こうしてお喋りするって事」


――ああ分かった。うん、それも楽しいよね。でも、バードはオイラが喋り過ぎると『うるさい』って言うんだ


「バードって、昨日の人?」


――そうだよ


「何故バードって呼ぶの? 教えてもらった名前と違うわ」


――バードってのはぁ……仕事の名前だよ。騎士とか漁師とかってのと一緒


「そう。どんなお仕事なの?」


ラドリーンはもう一本ソーセージを差し出した。


――歌を歌うの。幻獣を呼ぶんだよ。あとね、勇者のお話を歌う。月とか星の話も


リナムの言うことは半分くらいしか分からなかった。

が、どうやらあの男は吟遊詩人らしい。