ラドリーンは慌てて石台から飛び下りた。

黒猫も続いて飛び下りる。

見る見るうちに、ラドリーンが立っていた石台の一部が競り上がった。

呆気にとられていると、石台の端に三段ほどの階段が現れた。

タペストリーが微かに揺れて、海の匂いがさっきより強く感じられる。

それ以上石台が動く風でもなかったので、ラドリーンは突然出来た階段を上った。

タペストリーをそっと横に動かすと――

その向こうには深い暗闇へと続く入口が、ぽっかりと口を開けていたのだった。


――ミ……ミ……ミャア


猫が足元で、ラドリーンの長衣の裾と格闘していた。


「お前、中に入る気?」

ラドリーンは猫の邪魔をしながら聞いた。


猫は不満げに唸っている。


「お待ち。明かりがいるでしょう?」

それに長い糸も。

「探検には準備がいるのよ」


ラドリーンは猫を抱き上げて石台を下りた。

猫は狂ったように暴れたが、ラドリーンはそのまま図書室に戻って書棚を元通りに閉じた。

「夜になってから行きましょう。邪魔が入らないから」