アスタリスは灰色の、重たげなマントを勢いよく翻し、切っ先を反らして身をかわした。

まるで舞うかのようだ。

勢いでフードが脱げた。

銀色の髪は――革紐で結ばれてはいたが――壁の燭台の光を受けて、真紅に輝いた。

「なっ……!」

テオドロスは体制を立て直しながらギョッとしたように目を見開いた。

剣と剣が再びぶつかり合う。

テオドロスが片足で蹴りを入れようとし、それをかわして、アスタリスは飛び上がった。

抑揚のない平坦な旋律が、アスタリスの口からこぼれた。

すると、テオドロスの剣を持つ手がだらりと下がった。

「お遊びはここまでだ、司教」

アスタリスは空中に浮いたままだ。

「ラドリーンを勝手に連れ出した報いを受けよ」

「勝手にだと?! 王女はわたしが庇護しているお方だぞ!」

テオドロスは歯噛みするように言ったが、体が動かせないようだった。

「危うく死なせかけて、何が庇護者だ」

アスタリスはせせら笑い、剣を構え直した。

「もはや違う。ラドリーンは我が恋人。俺が守る」


「お待ち下さい!」

アルフレッド卿が両手を広げて、刃の前に立ちはだかった。