――ミャア、ミャーオ


猫の鳴き声に、ラドリーンは顔を上げた。

立ち上がって大きく伸びをすると、体がポキポキと鳴った。

すっかり体が冷えて強張っている。

例の黒猫に目をやると、石台の枕元――これが寝台だとしたらだが――の壁に掴まって後ろ足立ちで上を見上げていた。


壁には大きなタペストリーがかかっていた。


古ぼけて色褪せたそれは、よく見ると空の図柄らしかった。

右上の端に意匠化された太陽がある。

そこから放射状に伸びているのは光だろう。

光の後ろ側には、細長い雲、その間を大きな鳥が翼を広げて飛んでいる。

鳥と太陽には金糸を使った名残がある。

それから、一番下に奇妙な模様が……


ラドリーンは石台の上に上がり、間近でタペストリーを見た。


模様だと思ったのは飾り文字だった。


「えーと……時の主(あるじ)、不死鳥の名において」

ラドリーンは、指でなぞりながら文字を読み上げた。

「我、命ずる。扉よ開け」


ゴトン――

重い音と共に足元が揺れた。