Side木村樹



―――某時から八年


「暇だ…」

思わずついた溜め息と溢れてしまった言葉
文化祭は終わっちまったし、夏休みもまだ遠い

そう、最もつまらない6月

雨もじとじと
うっとーしーし
何が梅雨だ

湿気で楽器の調子が悪いんだよっ!


あーあ
なんか楽しいことない…
「樹!」
か、な!?

知らない女が叫んでる、俺の名前を

「何だ!?」
我ながらすっとんきょーな声
見覚えなんてまったくない

「あなたが、樹?」
「はい」
間髪入れずに答える
だって事実だし

疑問は一つ、こいつは誰だ…?






沈黙



を撃ち破ったのはそいつで

「いっくん、会いたかった…」
と、これ以上なんてありませんよーと言わんばかりの笑顔
いやいや、思わずドキッとなんかしてない


それにしても、
いっくん?
その呼ばれ方はとても遠い記憶にあって
しかも相手は知らない人であって

「だから、あの…誰ですか?」