顔にかかっている髪を退かすついでに額に触れてみる。
熱はない、な。
という事は体調が悪く横になっているのではなく、泣いているのは余程良くない夢でも見ているんだろう。
それならいい…
夢から覚めた優子を慰める為なら帰ってきた理由は充分ある。
「どんな夢を見ているんだ?もう泣くな。どんな状態であっても優子が泣いてる姿を見てるのは辛いんだ」
理由はどうあれ優子の涙は見たくはない。
寝てる所悪いがそろそろ起こしてもいいか?
「優子」
「……っ」
「優子」
「いやあああああああああああああああああああああああああああ」
突然、瞼を下ろしたままそう叫び藻掻くように手足を動かしだした優子の名前を呼びながら何度か強く肩を揺らす。
何度目かでぱちりと優子の目を開いた。
それは徐々に開いていくわけでもなく突然に勢いよく。