「優子からの連絡がない。だから様子を見に行く。それが理由だ」



それだけ串田に告げるとキーを持って社長室を後にした、そんな俺を串田は引き留めなかった。


串田が無駄な行為だと思うなら必ず俺を引き留める。


それが何も言わない引き留めないは行っていいを意味している。


こんな事一社会人としての行動ではない事くらい分かってるが、生憎俺は帰る選択しかない。


駐車場へ向かうエレベーターで、廊下でも何人かの社員と会い丁寧に挨拶をされたが俺は立ち止まる事なく軽く会釈…、いや会釈と言えない。


あぁ、と頷くだけで横を通りすぎただけ。


……親父から正式にこの飯田コーポレーション社長という名を、受け継いだ時に決めた決まりも今は守れない。


社長でありながらも社員と同じ目線でしんしに向かい合い、そして沢山いる社員の生活を背負っている事を忘れず仕事は一切手を抜かない。