「目を閉じるって…そしたらもっと見えないじゃない!!」

「いいから、閉じろ!」


こうの剣幕にヒナは言われるがままに目をギュッとつむってみた。


目なんか閉じたって……なんも変わらないよ…



そう呟きながらも目を閉じる。
当たり前のようにそこには先程と変わらない闇があった。
けれど不思議と恐れや孤独感がひいていくのがわかる。

知らず知らずのうちに強い力で胸に抱えていたモンタの体温や、こうやジュンの息づかい、必死に自分を守ろうとしている音…。

恐怖と孤独に消えていた全ての感覚がヒナのもとに戻ってきていた。


聞こえる…わかる…みんないてくれてる。




胸に小さく沸き起こる感覚に握りしめていた拳が緩むのを感じた。


「モンタ…ごめんね。」
「ウキ…」

窒息させてしまいそうな程抱きしめていたモンタをそっと降ろし、目を閉じたまま本を掲げる。


私に…できるかな…



「くっそ…」

トンッ

背中が何かにぶつかる。
暗闇に姿は見えないがそれが何なのかは瞬時にわかった。
その背は自分を守ろうと、昨日使えるようになったばかりの慣れない力、龍の風を操る幼馴染みの背中だ。


ゴメン…こう…ジュンも。

ヒナは小さく深呼吸する。胸に微かにわいた勇気をこめるように。


私に今できることは………!!



「私がこの闇を消してあげる!!だから…」



宝珠の力…私に力を貸して!


本を握る手に力が入り、静かに目を開けるとそこには見覚えのある顔がヒナを待っていたかのように微笑んでいた。

「あ…」

『見せてもらったわ、あんたの中の星。忘れんじゃないよ。
あんたを信じる星は見えなくても隠れてても必ずそこにある。信じてあげれば必ず応える。』


先程出会った星の宝珠が、暗闇に光りヒナに手を差しのべている。
力強く、凛々しい姿はまさに星と言える姿だった。


「あなた本当に…宝珠だったのね。」


本を開くと、その力強さに負けないように精一杯の
声で次々と浮かんでくる言葉を叫んだ。
そこには孤独を怖れしゃがみこんでいた自分はもういなかった。


「星の宝珠、ラスティーナ!私に従いなさい!!」



本のページが風に舞うようにハラハラと開かれ、七色の光が次々と光を放つ。
その光の一つ一つを追うように、ヒナは溢れる言葉を紡いでいった。


『万物の源、地、光、風……その全てを受け照らしたるは嬉々たる星々の………』


「よし!」


宝珠の詠唱を始めたヒナの声を聞き、こうは目の前の闇駒へと改めて向き直る。


「だめね、こいつ…倒しても倒しても霧のように蘇るわ、つまりこいつは実体じゃない!」


こうの風の護りの中から攻撃魔法を放っていたジュンが息も切れ切れに叫んだ。
闇駒の攻撃は容赦なく3人に向かってくる。
こうはリングを掲げているだけだが、ジュンは風の護りの届かぬ真上からくる攻撃に対する守護幕に、攻撃にと消耗が激しかった。


「どんなに倒しても大元を叩かないと…っ」

「ヤバイ…このままじゃヒナの召喚まで耐えられるか…」



その時だった。



こうの胸に突き刺さるような感じたことのない冷たい殺気という名の視線を感じたのは。

「!!!」


なんだ…この重い視線は……



「こう!?」