「嘘でしょ…まさかまた4DSとかいう奴等なんじゃ…」


立ち上がる砂埃の中を警戒しながら凝視するヒナに思いもよらない言葉が返ってくる。

「いったいわねー!こんなとこで何してんのよ人間!!」


砂埃から飛び出してきたのはヒナと同い年くらいの女の子だった。
漆黒の長い髪をおだんごのような髪型に結い、後れ毛は風に綺麗になびいている。
幾重にも重ねた着物のような服は七色のショールを纏わせ、まるで七夕祭りの織姫を連想させる。


ただ、淑やかな織姫の格好に似つかわしくない跳ねっ返りな口調やいきなり胸ぐらを捕まれていることにヒナの頭はついていけなかった。


「え…なに?誰…」


あまりの出来事に、口をパクつかせるヒナ。


「あんたを避けようとしたら着地を失敗したの!あんたのせいってことよ!わかる?」




あまりの暴言に目がチカチカしたが、ヒナはこの女の子の気配が普通のそれとは違うことを感じ取った。



この子…まさかね、まさか。


「あ、あんた噂の宝珠使いね?最近現れたって噂の。ちなみに私、宝珠だから」

「!!!」




ガーン!

……と効果音を鳴らしたいくらい驚きの表情を見せて固まるヒナのことなどお構い無しに宝珠の女の子は言葉を続けた。


「ん?あんたの「星」……揺れてるね。」

「え…?星…?」

「あんたの星が揺れれば周りも揺れる。」
「何迷ってるかは知らないけどあんたの星をあんたが信じなくて誰が信じるのよ。しっかりしなさい。」



「信じるって……私の星?」



宝珠はヒナの肩をポンと叩く。

「星はね。二種類あるのよ、自分でしっかり光って廻る星と誰かの光で廻る星と。だからあなたは光続けなきゃなんない。廻さなきゃなんないの。」


「この世界にいる間はね。」



その言葉を聞くと同時に、村からの甲高い鐘が鳴り響いた。
カンカンカンカン…!



「!何?」
『ふん、来たわね…』

目の前の女の子の顔は、宝珠の名にふさわしい凛々しい顔に変わっていた。