~オレはあいつを守ってやらなきゃならないのに!~


~オレにはなにも…!~

『あるよ。』

「!!」


知らずにつぶっていた目を開けると
そこは碧の空間だった。

水とも固形ともわからないただ、ただ碧の色の空間。

「どこだ?」

『あるよ。力。
望むならば、その手に湧き出でる力。
知ってるくせに。』

どこからともなく聞こえてきた少年の笑うような声にこうは苛立ちながら問いかける

「誰だ?」

『破壊も守護も…
巨大もゼロも…
白も黒も…
世界も人も……』

「なんなんだよ!?」
怒りをあらわにするこうに声は歌うように響く。

『お兄ちゃんしだいだよ。』

声はクスリと笑う。

「……」
「おもしれーじゃねーか…」

~のってやるよ!!~

こうは手を差し出すと大きな波に飲まれるように意識をゆだねた。




ビイイン!!

何かを弾く音に意識を戻される。
~はやく…あいつが…!!~


『なんじゃと…』
宝珠の驚愕する声にさらにこうの意識は急激に現実に戻った


「!!!」
「こう…?」

目を開けると巨大な蒼き龍のような風の渦がこうの腕輪を中心としてヒナをはじめ、一同を護るように尾を巻いていた。

「サンキュ!!」
ヒナはこうに笑いかけ、最後の詠唱を放つ

『時の呪縛!!リイム!!』
『な!!』

リイムの姿と共に無数の楔が宝珠に襲いかかった。

[newpage]


「やった!!」

時の宝珠の力により、楔のような光が宝珠を囲み、動きを制していた。

動きを止めている宝珠の表情からは、冷たさは消え、攻撃する気配もない。

「 なんだったんだ…今のは…」

蒼き龍の風も役目を終えたためか、跡形もなく消えていた。

『………宝珠に宝珠の力を使うとは…』
楔に手を触れると、瞬時に時の呪縛は消えた。

「えっそんな簡単に…」

必死の思いで放った力を容易く破られ、ショックを受けるヒナ

ガクン……
「 !?」

ヒナの体が崩れ、座り込む。

「ヒナ ?」
「!! 」

こうとジュンはヒナに駆け寄り、宝珠の前に立ちふさがる。

『安心せよ。もう攻撃したりはせぬ。』

「なんで……? 」

宝珠は一歩、一歩ヒナ達に近づく。

こうは宝珠をじっと警戒して見つめていたが、 敵意がない事を感じ、見守った。

宝珠はヒナの頭にそっと手をかざす。
すると、ヒナ の持つ本が開き、光り出した。 その光はヒナを包み、静かに消えた。

「………?宝珠の力…くれたの」

『天の宝珠・ラルド…
この世界の理を担ってお る。
多大な宝珠の光力を短期間に多々使えば破滅を 導く。
我を迎えねば滅びるところであったぞ。』


「…!!そんなこと言ったって…!」

溢れ出てくる思いをどうすることもできず、宝珠にぶつけた。

「どうすればいいのよ!!」

[newpage]


「ヒナ…」

「……。」

ヒナは溢れてきた涙と共に今まで抱えてきた想いを宝珠にぶつけた。

無情に世界から放り出された寂しさと、孤独感 。
そして、力によって不安定になる自分への恐 さ…

「私が…私が何だって言うの!?
私はただのヒナなのよ。
勝手に力とか宝珠とか 決めつけて、こんな何も知らない世界で私は死んじゃうの?
そんなのイヤ!私は…まだ」

そこまで言うと、ヒナの言葉は言葉にならなかった…

宝珠はヒナを見ていた。
ただ、じっとその言葉を聞き、その想いを受け取るかのように。
しばらくすると宝珠はヒナに手を伸ばし、微笑みながら囁く。

『…そんなことは我がさせぬ。
お主に背負わせてしまった命のこと……
宝珠達は悔いておる。
この世界のこと、 主たちはまだ知るべきではなかったはず。
決っせねばならぬのは主ではなかった。
ただ、廻りはじめてしまった…
だが、我がいる限り、決して主に害は及ばぬ! 』

宝珠は強く言い放つと、静かに本をヒナと共に 閉じ、光の中に消えた。

「宝珠……。2つ目の…私は…」
このまま宝珠を集め続けていいの?
聞きたい言葉をしまい、こう達に振り返る。

「戻ろ。街に。」

こうは頷きながらじっと、考えるようにヒナを見つめてい た。