静かだが、低く深い。


宝珠放った言葉はこうを不動にした。

「…は?どうゆう意味だ…?」

こうを一瞥した宝珠はジュンに向き直る。

『…魔法で防いだか……。主、ただの魔法使い ではないな…?』

「え…」

急に向けられた言葉に驚くジュン。

『己も知らぬことか………。』

「…?」


「おい!てめー無視してんじゃねー!」

目を合わそうともしない宝珠に、黙っていたこうが耐えきれず叫ぶ。

『…我は人間が嫌いじゃ。力を貸して欲しくば我を説き伏せるがいい。』

試すような、しかし自信に溢れた声をヒナ達に浴びせる。

「私は…私は、あなた達の力がどうしても必要なの 」
力を貸す…その言葉にジュンの表情は瞬時に変わり、必死にくらいつく。

「ジュン…? 」

宝珠を前にすると表情が変わるジュンを不思議に思いながら、ヒナは宝珠を見つめる。

『…言っておくが、今度は先程の魔法は効かぬぞ 。』
ヒナの視線に気付き冷ややかに呟いた。

「それなら!! 」

ヒナは本を掲げて微笑む。

「宝珠!私に従いなさい」

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『!?… その書は… !』

ヒナの持つ大きな本に気付き、宝珠の冷静だった表情は歪む。
驚く宝珠を横目にヒナは本を開き、詠唱を始めた。

「!!この詠唱……まだ解読されていないはずの 宝珠召還の儀!? 」
ジュンは宝珠と同じく信じられないと言った表情でヒナを見る。

「やるじゃねーか、ヒナ! 」

こうも挑むような顔で宝珠を睨む。 宝珠は静かに一度まぶたを閉じると、鋭い眼光 を向けた。

『すべての者に等しく流る時の砂塵よ…その砂 、受けるは古の石壺……』

『時の宝珠の詠唱か……まさか、リイムが還るとは……』

その聞き覚えのある詠唱を聞き、驚きと悲しみを隠せない様子の宝珠だったが、すぐさま、ヒナ達を 見据える…

『させぬ…。我は古えの過ちはもう… 』

宝珠が手を挙げたかったと思うと、眩い光がその手を中心に天空に渦巻く。

パチパチ……
火花、雷光渦巻く巨大な光…

今にもそれは、ヒナ達に向けられそうである。

「やばい !!」

「そんなあんなので攻撃されたら、防ぎよう が…!」

宝珠は無情にもその手をヒナに向け、振り下げた

ジュンは杖を掲げながらも悲痛な叫びをあげる 。 ヒナはまだ、己に迫る危機に気付かず目を瞑り、宝珠を召還させようと詠唱を続ける

〜どうすれば…あいつらをどうすれば守って やれるんだ!!〜