あの夜から彼の名は゛一夜″となった。


一夜は麗華の手をそっと手に取り、そっとキスを捧げた。


「一夜、貴方は誰を愛しているの?」

「それはもちろん、麗華様でございます。」

「それはどういった感情で?」

「全ての感情でございます。」

「なら、私に貴方を愛す方法を教えておくれ。
貴方はどうやって愛されたいの?」


麗華はそっと一夜の頬に触れる。


「麗華様、私は
犬を愛でるような感じで愛されたいのです。」


-麗華様がどこまで望んでおられるのかは分かりませんが、
何がともあれ、
私は麗華様の犬だ。

首輪をされ、命令され、実行をする。

ただそれだけでよかった。
麗華様の望む以上のことはしない。


「私は自分の中で、そう誓っております。」


すると一夜は麗華の手を取り、
自分の胸に当てた。

当てられた手を通じて
微かに感じる一夜の鼓動…

その鼓動は、少しすると速さを増していき、麗華にはっきりと感じられた。


「嗚呼、麗華様、聞こえますか?感じますか?私の鼓動の音が。」

-きっと私は、麗華様に何かを期待していたのだろう…
嗚呼…貴女はこの鼓動を、
どう受け止めて下さるのですか――――…?-