…これは一夜が麗華に
犬になりたい、と言ったその夜から始まった…。

「…え?
今なんて言いました?」

「…麗華様、俺は、貴女に命を救ってもらいました。」

12月31日の夜は、
特別に雪が多く、寒くて凍えそうだった。

行く宛もないまま、
大晦日で賑わう雪道を
一人、孤独に歩いていた。

寒くて凍えそうで、
力尽きて倒れたしまった俺の前に現れたのは、

まだ10歳にも達していない少女だった。

一緒に来ないか、そう言われた時、どれほど俺が救われたか…


「俺はあの時の恩を、
貴女の犬となり、返したい。
どうか…どうか…!」


頭を下げ、必死に願う彼を、
麗華はじっと見つめていた。

そして、彼をこう呼んだ。


「では、私の命令を聞いてくれるの?」

「!は、はい!!
なんでも…なんでも聞きます!」

彼は迷いのない目で
麗華を見つめていた。

彼は本気なんだと、
麗華は悟った。


「では課外授業を行ってくれますか?仔犬さん」


月に映し出された麗華はとても気高く、
怪しい笑みを見せていた。


「課外授業…?」

「ふふ…
…私に、人の愛し方を教えてほしい。」


…そして麗華様と俺の間には、課外授業という存在が生まれた。


「貴方、確か名前がないんでしたっけ?」

「あ…はい」

「…ではこう呼びましょう、
今から貴方の名前は…」


………………一夜