事実、姉弟として過ごしてきた間、圭輔が女の子に好かれているな、と思った事は多々ある。
ただ、いつもそれに浮ついた行動を取る事をしなかった圭輔に感服したりもしたのだが。
「高校生だもん。彼女の一人や二人…」
「二人はないだろ」
「そーいう真面目なとこが、ウケるのかな」
「…もーいーよ、オレのことは」
照れ隠しで圭輔はそう言ったのだと楓は思っていた。
「でも、そういう彼女がいてくれたら、私も安心するのに」
「オレは!」
急にガタンと立ち上がってまで、圭輔が何かを否定しようとしているのを楓は目を丸くして見上げて見ていた。
その視線を受けて、圭輔はひとつ咳払いをして、すとんとまた座った。
「…いや。とにかくオレ、今そーいうのいいんだよ」
「そ…う…。まぁ…そういうのは自然となるものだしね…」
そういう楓の中には一人の存在。
その人を思い浮かべながら言ったことに、圭輔はなんとなく察する。
「…姉ちゃんは、いるんだ?」
「は、はっ?」
「彼氏」
「かっ彼氏なんて…!」
そう突っ込まれてますます想像するのは堂本のことで。
楓は自分の意思とは反してその存在が頭から離れず顔を赤くする。
「まだ、そこまでじゃないんだ」
「まっまだっていうか……!」
ぶんぶんと手を振り必死にごまかそうとする。
ふと、その手を止めて、楓は急に冷静になった。
(“まだ”だなんて…これからもきっとそんなことにはならない)
「生涯独身だ」と、言っていた堂本を思い出しながら楓は思った。