「先週も来てくれたのに、大丈夫…?」


楓はレンの席ではなく、別卓に座っていた。
その隣には瑠璃。


「うん。大丈夫」
「…無理、しないで」
「…やっぱり、優しいな。シュウ」


ソフトドリンクを瑠璃に差し出すと、それを手にとって瑠璃は口を付けながら言った。


「私がシュウに会いたいだけだから…」
「それは嬉しいけど…何かあった?」
「………なかなか難しいね!」


カラン、と氷が崩れたグラスを淋しそうに見つめながら瑠璃は呟いた。
楓は俯く瑠璃を少し覗きこむように様子を窺う。


「…やっぱり、普段、私ひとりぼっちで」
「瑠璃…」
「なんか自分の存在なんて、ここにはないって、最近よく思っちゃう」
「そんなことないよ」


ぽたりと一粒落ちた涙を、楓はハンカチで優しく拭う。


「大丈夫だよ。まだ時間はたくさんある」
「でも…」
「それに僕も同じ」
「…シュウが…?」
「そう。誰だって、どっか孤独を感じてる筈だよ。恥ずかしいことでも、おかしなことでもない」


楓はポケットから飴を取り出して瑠璃に握らせる。


「?」
「これ、途中で味が変わる飴。ゆっくり時間を掛けて―――。きっと瑠璃の時間も一緒だから。ゆっくりと、気付けば変わっていってるよ」


その一粒の飴玉を見つめた後、瑠璃は握りしめて顔を上げる。


「…ありがとう」