「そんな、ヘンじゃないけどなぁ」
隣を歩く圭輔が楓を見て言った。
楓は圭輔が被ってきたキャップを深くかぶって外に出ていた。
「ま、姉ちゃんの性格なら仕方ないか」
圭輔が一人納得をして楓について歩く。
この昼間から、夜の仕事をしている人達と出くわすことはまずないだろうとも思うが、やはり落ち着かない。
まして本当に、普段から着たことのないような服装だから余計だ。
どこか気恥ずかしい思いも手伝って、楓は早くアパートに戻りたい一心で足早に歩く。
「ここで買い物しよう」
楓が足を止めたのは一番近くの小さな商店。
もう少し行けば、大きなスーパーもあるが危険だ。
ドアを押し開け楓が先に店に入る。
そして二人は買い物を終えてアパートへと引き返した。
「今日はどうするの? 泊まっていく?」
「………いや」
「そう」
「まぁ、一日くらい…ないとは思うけど下手に探されて、ここバレても嫌だし」
楓が俯いてぼそっと言う。
「…コドモは親を選べないって、本当不公平」
「…でも、姉ちゃんの母さんはまともだったんだろ。オレはーー」
「圭輔。親が選べないからって、それでコドモの価値は決まらないよ。圭輔はちゃんとしてる」
「………どうだろうな」
明るくしっかりとした圭輔が、表情に陰を作る。
「ほら! 圭輔、早く戻ってごはんにしよ!」
楓はぽんっと、圭輔の背中を叩いて先を歩いた。
その後ろ姿を見つめて圭輔が呟く。
「…自信、ねぇんだよ…“姉ちゃん”」