「圭輔!」
「ヤルわけねぇだろ。そんなんで人生棒に振るの、馬鹿らしい」


物騒なものいいに楓は腰を浮かせた。


「とにかく…私、頑張るから」
「―――本当、姉ちゃん、頑張り過ぎ」
「え…」
「ちゃんと食ってんの? 『頑張る』っつーんなら、まず自分優先にしろよ」


考えたら、まともに食事を作って食べたり、買い物すらもしていなかったかもしれない。
楓はそう思い返すと図星をつかれて俯いた。
圭輔はベッドから立つと、グラスをカウンターに置いて言う。


「なんか食いに行こう」


楓はバッと目の前に居る圭輔を見上げた。
あまり目立つ行動をしたくない。
けど、圭輔にうまくごまかす理由も思い浮かばない。


「なに? どうかした?」
「や、外食は……」
「あー…金ならオレが出すよ」


それでも浮かない顔をしている楓に気付いた圭輔は、思い出したように明るく言い放つ。


「外食やめた!」
「…?」


そして不思議そうに見る楓を見下ろして笑う。


「姉ちゃんのご飯、食べたくなった。なんか作って」


屈託なく笑う弟の姿に頬を緩めると、椅子から立ってキッチンに向かった。

そうは言っても、実際何かを作るのはこのキッチンでは初めてと言ってもいい。

楓は辺りを見回して何があるのかを改めて把握する。
パッと見、あるものは鍋とフライパン。
後はほとんど使えそうなものはなさそうだ。

その様子をカウンターから覗き込むようにして圭輔が言う。


「どっちみち、買い物は行かなきゃムリか」