「せいぜいレンのヘルプで、食いつないどけよ」


ドンッとすれ違いざまに肩をぶつけられる。

よろけて壁にもたれたところにケンがやってきた。


「シュウ! 悪りぃ。早く片付けよう…ぜ…って、なんかあったか?」


思いの外、リュウにぶつかられた肩が痛んだ楓は、左肩を抑えて一瞬表情を歪ませていた。
それを見たケンが異変に気付いて声を掛けた。


「…いや。大丈夫。ちょっとぶつけただけだ」
「ぶつけた? どこに」


ケンがそう言って楓の肩に手を伸ばした時だった。


「平気だッ…!」


楓はつい、身を引いて強く言ってしまった。
触れられることへの恐怖感と嫌悪感から、無意識にケン(おとこ)の手を否定した。


「ああ、悪い…でも本当、もう大丈夫」
「…わかった」


バツが悪く感じて楓はボソボソとした声でフォローする。

それからはいつものように二人で分担して店を片付け終えた。


「あー。腹減った…。シュウ、なんか食って行かね?」
「え? あー…うん…」


楓が迷って返事をしていたときに、ポケットの中の携帯が鳴った。

楓が携帯を手にしてディスプレイを確認すると、その表示されてた名前に驚きながらも電話をとった。


「もしもし…?」