「シュウって他にどのくらいお客さんいるの?」


2週間振りくらいに楓の元に現れたのは瑠璃だ。


「いや。他になんて、居ないよ」
「え? そうなの? 私だけ…?」
「そ。なんか、ごめん」
「……こちらこそ、ごめんなさい」
「?」
「…ちょっと、嬉しくなっちゃった」


瑠璃は照れたようにはにかんだ。
楓はそんな瑠璃を見て、キョトンとしたあとにっこり微笑む。
その自然な微笑みに、瑠璃はまた“女として”ささやかな幸せを感じる。


「いろんな男の人がいるのよね」
「そうだね。この店もいろんなタイプの人がいるから面白いよ。No.1のレンさんとNo.2のマサキさんが、既に正反対なタイプだし」
「へぇー。どの人かな…」
「レンさんは、あっち」


楓は視線だけでレンのテーブルを教えた。
相変わらず騒がし店内なのに、レンの周りだけは落ち着いたバーかのような雰囲気を楓は感じる。
まるであの空間だけ、時間がゆっくりと進んでいるような…。

惹き込まれる程のオーラ。
そんなレンの説明出来ない魅力に楓はいつも魅せられていた。


「すごくキレイな顔立ちしてる人…やっぱりNo.1て凄いんだ」


瑠璃が思ったことをそのまま口にしたことに、ハッとして楓を見た。


「はは。気にしなくていいよ。僕が到底敵う相手じゃない」
「そんなこと…! 私はシュウの方がいい…」


頬を赤らめて瑠璃は目を潤ませる。
そんな瑠璃が、女同士なのにも関わらず可愛く思える。
同時に嘘を吐いている罪悪感も感じながら楓は静かに微笑んだ。


「…ありがとう」